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ウンブリア便り 〜 Kyoko's Diary
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Kyoko's Diary
 
国境を越える
2007年11月5日(月) 

 秋晴れの気持ちの良い日、かねてから行きたかったチロル地方へ行った。車で8時間程、高速を走るとアルプスの山々が見えてくる。ウンブリアの自宅から見えるアペニー山脈も高いけれど、やはりアルプスの山はとんがっている。トレンティーノ、アルト・アディジェ地方の、オーストリア国境近くのドッビアーコという村に着いた。以前にもフランスとスイスの国境、イタリアとモナコ公国の国境沿いに行ってみたのだが、国境は面白い。モナコからイタリアに入ると、途端に高速道路の電気が暗くなって笑えるのだ。昔の物語を読むと、国境越えはなんだか悲壮な感じやドラマチックな感じに思えたが、今ではそういう感じは一切ない。
こんな風に、道を挟んでがらりと雰囲気が変わるのは、島国日本では味わえない面白さ。なんと言っても、チロルの人々はドイツ語が母国語なのに学校ではドイツ語、イタリア語の両方を習う。家ではオーストリア風の料理を食べ、ドイツ語圏からやってくる観光客にはイタリア料理を出すため、ピザ屋さんが多い。日本人の感覚からいけば、だれでも普通に2カ国語を話すことができるなんてうらやましい限りだ。もともとこの辺りは第一次世界大戦までオーストリアだったそうで、今でも使われていない昔の税関が残っている。

 2日目、ホテルで自転車を借り、オーストリアまで行ってみることにした。オーストリアまで55km、全部下り坂で、帰りは電車に自転車を積んで帰ることになる(これは便利)。自転車専用の道なので子供でも安心して通れるのがうれしい。左には川、右には見事なモミの木がうっそうと茂る森が続き、上にはとんがった山が見える。ウンブリアとの違いはいろいろあるけれど、一番うらやましいのは水が豊富なことか。

 しばらく行くとお腹が空いてきた。まわりには人気もなくお店は一軒もない。もう少ししたら国境だから、きっとバールかなにかあるはずだと走っていくと、あるある、まさしく国の境い目のバール。これを挟んで向こう側はオーストリアかあ、と感慨にふける。中に入ってパニーノを持ち帰りで頼むと、バールのおじさんは「お持ち帰りはやってないよ」と言う。川を見ながら食べようと思っていたのに残念だ。おじさんは「袋がなくてもいいなら、お持ち帰りでもいいよ」というのでそうしてもらう。そしてでてきたのは燻製の生ハムがはみ出るほどたっぷり入った巨大なパニーノだった。もちろん、バターとかマヨネーズとか、サラダとか余計なものは一切入っていない。見た途端、「やっぱりここで食べます!」と言うと「だから言ったでしょ」とバールのおじさんはニッコリ笑う。乾燥したパンと生ハムをひたすら噛み、カーッとビールを飲みながらモリモリ食べた。
ここでも、客は皆ドイツ語で、たまにイタリア語の人もいて国境沿いの雰囲気を満喫する。私などイタリア語が通じるかどうか、ホテルの人でも道行く人でもドキドキしてしまう。相手は東洋人がイタリア語を話すのを聞いて驚いていたが。

お腹が一杯になったら、またひたすら自転車をこぐ。出発した時小さな川だったのに、どんどん大きな川になっていく。リンツという駅に着き、電車に乗る前に街を見てみたいなあと思っていたら、ドッビアーコに戻る最終電車があと2分で出発とわかる。大慌てで電車に飛び乗り、自転車を自転車用の車両に積むこともできず、普通車両に押し込む。車掌さんは空いているから構わないよと言ってくれた。電車の中は中学生ばかりで、皆近くの村からリンツまで電車通学らしい。東京の満員電車通学を思い浮かべる。しかし殆どの子供がパソコンでシューティングゲームをしているのを見るとどこもあまり違いはないのかも。

ホテルに帰ったらヘトヘトで、バターたっぷりのチロル料理もおいしかった。水がよいから草も豊富で、放牧が盛ん、朝食のヨーグルトやリコッタチーズは牛乳の濃い味がして、朝からまたモリモリ食べて、日中は自転車の旅を楽しんだ。遠いけれど、時々は訪れてみたいところだ。

                      今日子










   

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