このオリーブオイルを使い始めてからそろそろ8年目になる。はじめて食べた時にとてつもなくおいしいと思ったことは書いたが、使っているうちに、ある面白いことに気がついた。1年程経った頃からだろうか、たいがいのオリーブオイル、サラダオイル、ごま油など油全般に、食べるとウッとなるようになった。匂いが気になるのだ。そして食べた後胃がもたれるようになった。油が体に与える変化に驚いた。それでこの辺りの人はあれほど口うるさく「これは胃に重い、あれは体に悪い」と言うのだろう。今日このことを書こうと思ったのは、うちのオリーブオイルを使っているローマの親戚から「あんたたちのせいで他のオリーブオイルは胃にもたれて食べられなくなっちゃったじゃない。わざわざ買いに行くの大変なんだから!」と威勢のよい電話があったからだ。そういえば、ブオーノイタリアのお客さんにも同じことを言う人がよくいる。 イタリア料理はもちろん、中華料理や天ぷらなども、よっぽど油に気をつけているレストランでなければどんなに料理がすばらしくても油で損している。油ごときにお金を使うなんてもったいないというのが、もともと油を料理に使わなかった日本人の感覚かもしれない。だが油をたくさん摂るようになった現代では、油だからこそ、良質のものを使うイタリア人の感覚を見習いたい。
オリーブオイルはパンやサラダに生でかけて食べる方法や炒め物に使う以外にも、“煮る”、“米を炊く*”、“最後の隠し味に”“旨味調味料に”、“保存食に”“お菓子に”などなど、あらゆる料理法に適している。日本人は、今までは油を炒めて揚げる物として、最近ではパンやサラダに生で使うことを覚えた。だがまだまだ油の使用方法は様々である。
オリーブオイル以外の油だと、西洋料理ではグローバル化が進んだためにバターが主だが(マーガリンは言うまでもなく)、良質のラードもいろんな料理に活用できる。バターを使っておいしい料理ができるのと同じように、豚のラードを使っておいしくできる料理もたくさんある。お菓子だってそうである。豚のラードをお菓子作りに使うなんてオシャレなイメージではないかもしれないが、あるフランス人料理研究家の本にも、「イタリアでは良質のラードを使ってすばらしくおいしい料理ができる。フランスでは使わないのが残念だ」と書いてあった。面白いでしょ。 乳製品のアレルギーがある子供にも、バターを使わないでオリーブオイルやラードを使ったおいしいお菓子ができると思えば、アレルギーの子供用のお菓子を購入してさみしい気分になることもない。 「油は体に悪い」のではなく、「質の悪い油はとても体に悪い」という風にイメージが変わればいいなと思う。良質のオリーブオイルはちょこっとパンにかけて食べるだけでなく、適量をどんな所にもあらゆる方法で使いこなせれば、料理の幅がグンと広がるはず。
*この間タイ米をみじん切りのタマネギとオリーブオイルで炒めて塩を少々入れ、蓋をして炊いてみた。炊きあがったらレモンの皮をすりおろして混ぜて食べたのだがすごくおいしかった。子供の頃タイ米はくさいと思っていたのが嘘のようだ。
今日子
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