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ウンブリア便り 〜 Kyoko's Diary
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Kyoko's Diary
 
噛めば噛むほど
2005年11月19日(土) 

牛肉の赤ワイン煮
牛肉の赤ワイン煮
冬時間に代わり、暗くなるのが早くなった。寒くなっていよいよ温かいご飯がうれしい季節だ。今日は牛肉の赤ワイン煮、ブラザートを作ることにした。年に一度農家で購入する牛肉を使って作るのだが、この赤身の牛肉は煮込み料理に大変適している。

10年前、イタリアに住み始めたばかりの頃、牛肉が固くておいしくないなと思っていた。霜降りの、口に入れたらとろけるような牛肉か、肉そのものの味よりもソースや調味料の味がよくする牛肉に慣れ親しんでいたからだ(もちろん今でも好きだ)。ところがイタリアで食べる赤身の牛肉の固い事と言ったら、まるでゴムのようだ。なんでこんなに固い肉がいいのかなあ、あらためて日本の牛肉はすばらしいと思っていた。その考えが変わったのは、フィレンツェでステーキを食べてからだ。ビステッカ・フィオレンティーナはキアーナ牛という種類の牛肉を使うのだが、この牛は赤身肉にもかかわらず適度に柔らかい。霜降りの“とろけるような”食感とはまた違い、噛めば噛む程味がでてくるタイプの柔らかさである。霜降り肉のように、よく噛む前に口の中でとろけてしまう肉とは別のおいしさだ。なるほど、これならとろけるように柔らかくなくてもいいわけだ。

肉だけではなく、イタリアに来たばかりの頃、日本で食べた方がおいしいと思っていたイタリア料理は多々ある。時々イタリアのレストランに行っても、なんだか粗野で乱暴な料理だなあと思っていた。よく言えば“素朴”だけれど、日本のレストランで食べるイタリア料理のように上手く調和していない感じがしたのだ。パンもお菓子もそうだった。しかし食べ慣れてくると、固くてもガジガジしていても、粗野な感じでも、素材の味が活きているのはイタリアで食べるイタリア料理なのだなあと、考えが変わった。訓練されて素材の味をよく味わえるようになったのだ。

日本では「サクッと軽い食感」や「ふんわりとろける食感」「まろやかな味」など、調和がとれて丸く収まった料理というか、口の中で抵抗の少ないものを好む傾向が全体的に強くなってきているのだろうか。こういう食感の西洋料理には、たいがい脂肪分がより多く含まれている。「癒し」という言葉をよく目にするが、ふんわりとろける食感は「癒し」の一つなのかもしれない。柔らかいものを好む傾向が強くなってくるというのは、人類の進化の過程なのだそう。そういえば昔は日本でも和食独特の固い食品を日常よく食べていたという。煮干しやせんべいが子供達の普段のおやつだったのだし。もちろんイタリアにも柔らかい料理はたくさんあるが、傾向としては、固いものは固い存在として残されているように思う。

というわけで、うちで作るブラザートは、4時間煮込んでいるけれど、お肉が原形を留めており、噛んでおいしさを味わうことができる。水を一切いれないで、セロリとニンジン、よく炒めたタマネギとトマトを少し入れ、これらを煮込んだ後にシノワでこして、ソースにとろみをつける。小麦粉とバターでブラウンソースを作る面倒がなくて簡単だ。牛肉が赤身なので、全体にさっぱりして食後感もとてもよい。

今日子


   

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