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ウンブリア便り 〜 Kyoko's Diary
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Kyoko's Diary
 
幸せのチャンベッローネ
2005年10月22日(土) 

見るからにおいしそうな色
見るからにおいしそうな色
世界各国で鳥インフルエンザの不安が広がる中、私の住むウンブリアの村でも対策を強いられている。この時期に菌をもった渡り鳥がアジアから飛んでくるということで、家畜、特に庭で放し飼いにされている鶏たちに感染しないよう気をつけなければならない。農家の人々は、渡り鳥が飛んでくる前に何十羽という鶏を絞めて冷凍にし、冬に備える。残った鶏卵用のにわとりは囲いをして屋根を作るなど、渡り鳥との接触を避けるようにしている。接触とは糞が落ちてきてもいけないのであるから、どうやって防ぐのか、不安は広がるばかりだ。

卵は使う前にかならず洗剤で洗ってつかわなければならないし、卵を使わない家庭もでてきている。卵は料理にももちろん使うが、クロスタータと並んでどこででも目にするチャンベッローネというケーキにも欠かせない。チャンベッラはドーナツ状のお菓子で、それの大きいものという意味だが、ようはシフォンケーキの形をしたスポンジ状のケーキである。今までバールで売っているものを食べて、日本のフワフワで口当たりのよい、いろんな味の重なったケーキに慣れていた私は「なんてまずいケーキだろう」とひそかに思っていた。しかし農家で主婦たちが作るチャンベッローネを食べているうちに、これも意外とおいしいのではないかと思うようになった。

シフォンケーキの半分の量の卵を使って焼くチャンベッローネは、素朴そのものの味で、バターも入っていない。卵3個、小麦粉300g、牛乳カップ1、砂糖250g、サラダ油カップ1、ベーキングパウダー5グラム。これが材料で、もちろん、主婦達は目分量であっと言う間に作ってしまう。分量は私がわりだしたものだ。

中でもエミリアおばさん(となりのカポッチ家の)の作るチャンベッローネは格別においしくて、作り方をきいて何度も挑戦してみたのだが、どうも彼女のようにできない。卵、砂糖、小麦粉、牛乳、サラダ油、ベーキングパウダーだよね?と何度も聞き直して挑戦したが、なぜか違うものができる。シンプルな材料ほど侮れないものだ。悔しいのでおばさんが作っているところを直接見せてもらうことにした。真剣な私を見て、「普通に作っているだけよ」とエミリアおばさんは笑う。

見て"な〜んだ"、と思った。スポンジケーキを作る時の要領で、卵の白身と黄身をわけて泡立てていたことが、まず間違いだった。さらに、泡立てる時「白身が固く気泡が細かく滑らかになるまで」というやり方と違い、そんなに真剣に泡立てていない。そして残りの材料を無造作にまぜる。実に大雑把だ。

「気泡を潰さないようゴムベラで切るようにして混ぜること」という、スポンジケーキを作る時に必ず気をつけなければならないお約束は一体どこへやら。最後にベーキングパウダーを入れて混ぜたら、180度のオーブンできれいな焦げ茶の焼き目がつくまでゆっくり焼く。

スポンジケーキのようにフワフワではなく、どちらかと言うとどっしりしている。小麦粉の粗い気泡がパンのようでもある。中は見ただけでうれしくなるようなきれいな黄色だ。このシンプルなチャンベッローネは子供達の大好物で、田舎ではどこででもでてくる。子供の頃って、こういうシンプルなケーキで素材の味を感じられるように味覚を鍛えればそれでいいのではないかな、とふと思う。

今日子


   

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