今年もいよいよ豚の解体がはじまろうとしている。しかし一緒にやるカポッチ家の人々が風邪をひいたりして予定が延びている。豚の方はやれやれと思っていることだろう。豚の解体は大仕事で、毎年近所のカポッチ家と一緒にやってもらうことにしている。とても一人でできる作業ではないので、親戚がたくさん集まって行う。豚を絞める時期は、だいたいどの家も12月の終わりから1月の初めだ。生ハムや生ソーセージ、ベーコンを干しておくのには、寒い時期の方が適している。暑い時期に行うと生肉なのでどうしても腐ってしまうのだ。そういう理由で一年に一度の大事な行事なのである。
絞める時は、だいたい豚に食欲がなくなってくるので、その時を見計らって行う。銃で額を打ちぬくそうで、豚は殺される時がくると雰囲気を察知するらしい。昔は首からナイフを入れて殺したらしいが、苦しむし暴れて大変なので銃になったという。そういう話を聞くと、やはり肉を食べるのをやめようかなと思ってしまう。豚自体はかわいいと思うし、他の動物も大好きだ。しかし自分で解体すると、特別おいしいという以外にも、肉に敬意を払うと言うか、食べる意味をよく考えるので、私は変にベジタリアンになろうなどと思わない。心やさしい夫・シルヴィオは反対で、ベジタリアン寄りの考えを持ち、私と暮らす前までは肉は一ヶ月にいっぺんくらいで自分からはほとんど食べないようにしていたそうだ。でも一緒に暮らして目の前においしい肉があると、どうしても食べてしまうのだそうだ。
農家の人々は、動物に対する接し方が都会の人々と違う。家畜はまず第一に食べるためのもので、ニワトリ、豚、牛、羊などが重要である。最後に犬と猫がくる。犬はかわいがるというよりも泥棒よけで、猫はネズミをとるため。それ以外の意味は特にない。以前うちの猫の避妊手術をした時の大家さんの反応にはびっくりした。「なんてかわいそうなことをしたの。この猫はもうメスとしての機能を持たなくなったのね!」と言われたのだ。しかし私はこの大家さんの猫が子猫を産むたびに、大家さんが壁にたたきつけて殺しているのを知っている。そっちの方がずっとおそろしいことのように思うのは私だけかしら・・・。
豚や牛を農家から買うのでたくさん肉を食べているように思われがちだが、実際には一年分なのでそんなにたくさん食べているということはないと思う。
ともあれ、明日は豚を絞める日なので、また一年ありがたく食べることを誓ってみた。
今日子 |