日本から来た知人が、普段ローマで語学を勉強し、週末うちに遊びにくる。いろいろと家の手伝いをしてくれ助かっているのだが、パスタを茹でるときいつも一番大きな鍋にお湯を沸かすので、なんでだろうと思っていた。
すると先週、その彼女が住んでいるアパートの家主のおばさんに、なんでそんな大きな鍋でパスタを茹でるのかとあきれられたと言う。それで彼女は、パスタはたっぷりのお湯で茹でた方がいいと聞いた、と答えたら、イタリアでは誰もそんな大きな鍋で茹でる人はいないと言う。水はもったいないし、沸かすのにすごい時間がかかるし、みんな2人前くらいなら普通に1リットルちょっと入る程度の鍋で茹でるのでは、と言う。
それに茹でる時にオリーブオイルをお湯に入れるとパスタがくっつかないし、沸点が下がらないのでおいしく茹でられる、と言ったら大笑いされたという人もいる。パスタは入れた時に一混ぜすれば別にくっついたりもしない。
普通家庭で食べる場合、そんなことしなくても十分においしいくパスタを茹でられる。アルデンテ、アルデンテと言うけれど、そんなに厳しく時間をはからなくてもみんな適当にアルデンテにしていて、そこまで厳密にはかっている人も少ないだろう。
ではなぜ日本ではそんなにいろいろ細かく言うのかというと、一つは日本で言われているイタリア料理は、レストランのコックさんがイタリアのレストランで習って日本に広めているのが大半だということ、もう一つは日本では水も空気も塩もイタリアと違うので、大ざっぱに作ってもイタリアで作るみたいにおいしくできない、どうやったらおいしくできるだろうかと、日本人特有の細やかな神経となんでも習ってしまう向上心でそうなったのではと思う。
イタリア料理を作っていて一番大事なのは、やはり「感覚」ではないだろうか。きちんと決まった分量で決まったレシピで言われた通りに作るのではなく、作っているときに感じるもの、暑いとか寒いとか、くさいとかいい匂いとかからはじまるのが楽しくていいと思う。
今日子 |