最近となりの家は鉄工場の仕事がうまくいってか、とても羽振りがよい。
しかし驚いたことに、いつも一生懸命やっていた家庭菜園をやめるというのだ。どうしてかたずねると、面倒くさいし時間はかかるし、お店で買った方がよいと言う。畑があった部分はプールにするそうだ。
・・・、あんなにおいしい野菜を作っていたのに、今までたくさん出来た野菜をよく分けてくれていたのに。そうか、家庭菜園は貧しかったのでやっていたが、野菜を買うお金ができたのでもういらないのだ。
なんとなくショックを受けてしまった。私は田舎に引っ越して、野菜を自分の手で作ることがどんなにうれしいことか知っている。大きな街で暮らしていて、どんなに採れたての野菜が食べたいと思っても手に入らなかった。何かを1から育ててできたものを収穫して食べるという喜びは、いい表せないほどのものだ。
それをあっけなくやめてしまうのは私にとっては勇気がいることだ。これから先、もし都会に戻ることを考えると、まず最初に思うのは飼っている大型犬でも広い家でもなく、畑のことなのだ。
これからおとなりには採れたての野菜がなくなるので、私がおすそわけすることにした。
サラダ菜を持って行くと、「まあ、ありがとう。とってもうれしいわ。だってうちにはもうこんなおいしい野菜はないからね。」と感謝された。なんだか立場が逆転したようで変な気持ちになってしまい、やっぱり畑があった方がいいんじゃない?と聞くと、そうね、でもキョーコがいるから、と言われてしまった。
今日子 |