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Silvio's Words
 
オリーブの実
2004年11月15日(月)   

ピエルサンティ家のオリーブの実
ピエルサンティ家のオリーブの実
地中海地域の人間はオリーブの実を少なくとも4千年は食べてきた。パンとオリーブは、イタリア南部の農民の一番貧しい食事の典型とされてきた。今では、オリーブの実は、軽い食前酒によく合う美味なもの、または皿をきれいに飾るもの、ソースの味をより深くするもの、ペーストにしてパンに塗って食べるものとされている。

ローマや南部イタリアでは、今でも"オリーブドルチェ"というものが売られている。買うと模造紙を三角にくるりと丸めた中に入れてくれ、歩きながら食べたり、映画を観ながら食べたりする。イタリア版ポップコーンといったところか。オリーブドルチェは実が大きく緑色で、最初に苛性ソーダに漬けて苦味を抜いてしまう(それでドルチェという)。色も落ちる。そのあと塩水に漬ける。オリーブドルチェは爪楊枝に刺して皆さんのカクテル、マティーニについてくるものだ。また、ちょっとおしゃれなバールで、カウンターにポテトチップ、ナッツ、塩味のクラッカーなどと一緒にならんでいて、食前酒やビール、スプマンテのつまみとして力を発揮する。

そうそう、スプマンテといえばみなさんはご存知だろうか。フランチャコルタやフェラーリ(フォーミュラ1とは関係ない)のものは、フランスの最もおいしいといわれる高級シャンパンに全くひけをとらないものだということを。値段も残念ながらひけをとっていないが。

おっとオリーブの話だった。僕の祖父は、よく食事の最後にブラッディーオレンジとオリーブのサラダを食べていた。オレンジを皮付きのまま薄くスライスし、燻製オリーブをこぶし一握り分、たっぷりと入れる。味付けはオリーブオイルとレモン汁を半個分、それに塩をくわえ、サラダボールにいっぱい食べてウムムと満足の唸り声をあげていた。

もし、後の半分のレモンがどうなったか気になる方には、すぐにお答えしよう。祖父はオリーブのサラダをモリモリと食べ終わったとたんに、残ったレモンをつかみ、上を向いて頭を後ろにそらせ、レモン汁を目に3滴たらしていた。この時には唸り声は痛みのウムムに変わる。レモン汁を目にたらすのは、目にナイフを刺しこむようなものだ(これは本当に言葉のとおりで、間違っても試してみようなどと思わないでほしい)。祖父の目から涙が頬を伝い、下に落ち、大きな髭の上でとまるのを覚えている。

祖父は恐ろしいほど苦しんでいた。しかし彼は、レモン汁は目を消毒するのに一番よい方法で、これをやっておけば、絶対目の病にかからないはずだと信じていた。僕は本当かどうか知らない。分かっているのは、彼がとても長生きをしたこと、僕にとっては恐ろしく退屈だった人類学の本(祖父は誰よりも早くからルドルフ・スタインの本を読んでいたイタリア人の一人だった)を、いつも彼のために朗読していたことだ。やはりもう目がよく見えなかったのだろう。それを受け入れたくなかったのでこのマゾ的なレモン汁療法を続けていたのだ。彼は他の多くの老人のように鼻眼鏡もかけていた。

その代わり、燻製オリーブはどのようにして作るのか知りたいとおっしゃる方がもしいるならば、詳しくお話できるだろう。ここウンブリアのオリーブ畑に囲まれた丘陵地帯に住むようになってから、我が家でも毎年作るようになったからだ。

1. 11月の初旬、1500年代に建てられた我が家の庭の、熟したばかりのオリーブの実を3、4kg摘む。
2. 水でよく荒い、布の袋かタオルに包み、一日中よく燃える、ウンブリア式の幅広い暖炉の壁の横に吊り下げておく。薪はトキワ樫かトルコ樫で、前の年に切って乾かしたもの
3. 2,3日おきに混ぜる。2.3週間経つとオリーブの実が乾いて皺だらけになっている(こうなりたくなければオリーブの実とオリーブオイルをたくさん食べることだ、冗談)。
4. オリーブの実をサラダのように味付けする。オリーブオイル少々(オリーブの実がよく混ざる程度)、シチリアオレンジの皮の細切れかつぶしたもの、塩はお好みで、お好きならペペロンチーノも一緒に。
5. できたらきれいに洗ったビンに詰め、ふたをきちんと閉めておく。そしていつでも食べたい時に、友人をもてなす時に、ビンから取り出して味わうのだ。

気をつけてほしいことは、ビンを高いところなどには置かないこと。なぜなら、こんなにおいしいオリーブを、手の届かない食器棚から懸命におやつを盗み食いする子供のように取り出さなければならないなんて面倒だからだ。

え?なんですって?誰もオリーブの木に囲まれた1500年代の石造りの家に住んでないって?大きなウンブリア式の暖炉もないって?

東京や大阪からイタリアまで毎月の飛行機代を考えると、我が家の家賃にはあり余る程です。…というのは冗談だけれど、ナポリの古い格言に「ひよこは冗談を言いながらも実際は真実を語っている」というのもある。

燻製オリーブにはいろいろな食べ方がある。最もポピュラーなものをご紹介したい。

1. ツナのスパッゲッティにケイパー、パン粉と一緒に
2. 鶏肉、ウサギの肉、羊の肉の猟師風(ワインビネガーや白ワイン、ニンニクとローズマリーで炒め煮にしたもの)
3. いろいろなタイプのサラダに(先に紹介した祖父のサラダも含め)
4. そのままでテレビでも見ながら(ポップコーンなどよりも)
5. 子牛のぶつ切り肉の煮込みに
6. 豚ロースの付け合せに
7. バジリコ、シチリアのトマトパキーノ、オリーブを入れた海老のサラダに
8. クロスティーニ(パンの上にいろいろなソースやペーストをのせたもの)用のおいしいオリーブの実のパテ

このパテには数えきれない程おいしい食べ方がある。我が家でよく作るのはこのパテとケイパー、乾燥トマト、唐辛子を混ぜたソースである。これはたくさん作っておいて、パスタを茹でてからめるだけの便利なソースだ。パスタをからめた後、上にオリーブオイルをたっぷりかけて食べる。これはちょっと疲れがたまった時などによい。

もうひとつ、オリーブの実の塩漬けがある。つまり水と塩に漬けたものだ。オリーブの実を岩塩に漬け、一ヶ月ほど置く。こうすると、オリーブの渋みが抜ける(生のオリーブはものすごく苦くて食べられたものでない)。一ヶ月経って苦味が抜けたらオリーブから出たアクを捨てて水で洗う。ビンに新しく水を入れ、オリーブの実の塩抜きをする。2週間毎日水を変える。時々、味見をして、オリーブが塩辛くなくなったら、海水より薄めの塩水につける。

塩漬けオリーブの実は燻製オリーブと同じような使い方をしたり、ピザにのせたり、フォカッチャの生地に混ぜ込んで焼いてもよい。

オリーブの実の欠点といえば、残念ながら食べたら吐き出さなければならない、うんざりするような種があることだ。エレガントな吐き出し方に不可欠のマナーを二つ紹介しておこう。

1. 実をきれいに食べる。食べ残しが完全にないようにし、見た目が悪くないようにする。種に実があちこち残っているのはかなり汚い。
2. 口から指で摘んではいけない。頭を下げて皿の上に吐き出してもならない。ではどうするか、フォークを口の前に持っていき、上に種をのせたら皿のふちに置く。向かいに座っている人はあなたのこのちょっとしたがんばりに感謝するだろう。

もしまだオリーブの実がどれだけおいしくて体によいか納得がいかない方、オリーブは「トコフェロール」と「ポリフェノール」という成分が豊富で、老化を防ぎ、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞を防ぐと言われている。また、癌と戦う有効成分「スクアレーネ」も含まれている。これらの効果を期待するには、オリーブの実を一日50gから100g食べればよい。生化学の教授エツィオ・ガリアルディ、遺伝学と食品科学の権威が証明している。要するにオリーブ万歳だ。おいしくて体によいとされる数少ない食品のひとつだ。人生でも数少ない偶然。「本当においしい食べ物のすべては不道徳か、太るかのどちらかだ」とスペインの哲学者Miguel de Unamunoが言っている。


   

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